ビュートレスとは、風景(view)をなぞる(trace)とつなげた造語で、窓から見える風景を、ガラス面になぞっていくアートワークショップの作品です。
目の前に広がる風景をなぞることは、見るという行為を強く意識させます。
私達は、見えているものを疑いなく、見ていると観念的に捉えてしまい、
見ているのに見えていないことを、見落としてしまいます。
ビュートレスは、見て、なぞることで「見るということ」を体験する、アートワークショップです。
『あいちトリエンナーレ2016』連携事業の一環として、アーティストが考える「なんだかうれしい!」を感じる作品の展覧会。愛知県陶磁美術館で、ビュートレスを行ないました。
おなじものを見ているのに、おなじようには見えていない
おなじことをしているのに、おなじようにはできない
おなじように生活をして、息をすっているのにおなじ人は、1人もいない
おなじでないことが形になると、なんだかうれしい
『なんだかうれしい』(福音館書店)は、「谷川俊太郎+だれかとだれか」による絵本です。ごはんの炊ける匂い、どこからか聞こえてくるピアノの音、夕焼け空、理由はわからないけど心をくすぐられたような「なんだかうれしい」気持ちがあつめられています。
子どもも大人も、忙しく、大変で、どちらかというとつらいことに気をとられがちな日々ですが、だからこそ、毎日の生活の中のちょっとしたうれしいこと、うれしくて心が動かされたこと、そんな気持ちに気がつくあそびを考えました。
http://www.acc-aichi.org/2015/07/夏季特別企画なんだかうれしい2105/
「clas」(cell for liberal arts & sciences/クラス)は、名古屋大学の授業および学生・教職員・OBOGらの教育と研究、社会的活動にかかわる展示・プレゼンテーション・セミナー・ミーティング等の空間として使用し,大学における視覚を通した複眼的な思考と総合的な知識を育成し、ひろく地域の文化の向上に資することを目的としています。
私たちが何気なく目にしている街や風景を、普段立ち止まって見たり、自分や他人の視点について考えたことはありますか?
そんな投げかけを、名古屋大学のキャンパスを舞台にビュートレスを行ないました。見慣れた学内の風景を見直し、なぞることで、得られる発見を体感する展覧会です。「clas」から外に出て,キャンパスの風景をトレースし,紙に転写する「モバイル・ビュートレス」も行いました。
http://www.vision.ss.is.nagoya-u.ac.jp/clas/programs/314.php
片目を閉じ、体を止め、ズレないようになぞっていきます。 見ることと、なぞることを同時にすることで、「見ること」を身体で直接体験します。
児童館から見える海南こどもの国の風景を窓ガラスになぞって描いていくワークショップ。窓ガラスに自由に好きなものを描くのではなく、目の前にある風景の中から自分が見て興味のあるものをなぞっていきます。
一つの同じ風景を見ていても同じものを見ているとは限らないといった自分自身の視点や他者の視点に気が付くことができる。また、見たままになぞっても同じようになぞれないという、見ることと描くことの違いを身体をとおして体験します。
東邦高等学校 美術科の油画専攻の学生と、高校の窓ガラスから見える風景を、ビュートレスしていきました。
アトリエからの風景
中庭のある風景
校内にいる私たち
と場所や対象を変えて、ビュートレスをしました。
アトリエからの風景
普段制作する、アトリエの中から、外の風景をみてなぞっていく。
目の前にある、真っ白なキャンバスではなく、ビルや空や木々や、すでに形作られているものをなぞること。
中庭のある風景
階段の外には皆が毎日通る中庭があります。
学校生活のあたり前の風景ですが、見てなぞる事で、学校の構造が見えてきました。
人が集まる場所を真ん中に、校舎が建っている事。なぞる事でパースができたビュートレスを見て、その事に気が付きました。
校内にいる私たち
風景の中には、私たちも含まれている。
この場所にいる人をなぞるビュートレスをするために、風景の中でポーズをとってみました。静止してる人をなぞるのと、動いている人をなぞること。
同じ人間をとらえるにも状況によって様々です。
普段は、絵を描くために見ている側の自分が、見られる体験をしました。
ポルトガル、ギマランエス市で開催されたアートフェスティバルの展示、ワークショップ。ギマランエス街並を取材し映像にとり、その映像を後ろにスクリーンのあるガラス壁に映写し、その風景をなぞっていく。
映像の街並となぞられた街並、なぞった線によって出来た影の街並みとが重なり合い幻想的な風景が出来上がった。また現地の人にもなぞってもらうワークショップをおこない、不断見慣れた街並をなぞることで改めて街を見る体験をしてもらった。なぞった後に見る実際の街並がすこし変わって見えたらと考えました。
展示会場の窓越しに見える空と地面の境界線をなぞっていくワークショップ。子供や大人、健常者、障害者も関係なく1つの線をひき、色とりどりの地平線が、出来上がります.
児童総合センターの遊び場の風景を、定点で映像に撮り、その映像を壁に映し出しました。その映し出された映像を、一つの風景として、映像の中の人や建物の丸、三角、四角といった形を見つけて、なぞっていきました。
なぞって遊んでいるうちになぞれる場所が少なくり、そのなぞってできた形の中を塗っていこうと発展させていきました。最後には映像が消えて、皆で描いた風景画が現れます。
児童総合センターの窓から見える風景をガラス窓になぞっていきました。なぞる線は1本のみというルールも追加。自分の目線で見えるものを 1本の線でどれだけなぞれるか、そんな試み。一つの同じ風景を見ていても、 視線や視点の違いにより、一つとして同じではないビュートレスが出来上がります。